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Storm: Letters van Vuur ストルム/ルターの手紙

オランダ・ベルギー映画 (2017)

1521年のアントワープを舞台にした歴史物。主人公となるのは、印刷屋の息子ストルム。背景となる時代は、有名なマルティン・ルターが、それまで綿々と続いてきたカトリックの枠組みに真正面から挑み、プロテスタントの旗を揚げ始めた頃にあたる。ルターといえば北ドイツだが、ルターからの「炎の手紙」〔原題〕を印刷しようとして審問官から迫害を受けるのは12歳のストルムとその父。ストルムは、手紙の内容を組んだ活字の箱(=版盤)を持って逃げるが、それを助けるのが、下水道に数年間暮らしてきた12歳の少女マリーケ。禁書を印刷しようとした罪で火あぶりにされようとするストルムの父を、2人が協力して助けようとする。時代背景も、舞台となるアントワープの下水道も、印刷屋という職種も、映画では滅多に取り上げられないものなので、ハッピーエンドと合わせ、楽しく観ることができる。アメリカのワン・パターンのヒーロー映画に比べれば、よほど面白いと思うのに、本国公開から2年が経ってしまい、日本で公開される望みは消えた。運が良ければ、DVDスルーされるかも。

事の発端は、北ドイツのヴィッテンベルクにいるマルティン・ルターが、当時、アルプス以北では最大の都市になろうとしていたアントワープの人々に対し、カトリックからの離別を強く訴える手紙を出したこと。その内容は、当時のカトリックの「金儲け主義」的な発想を批判するとともに、アントワープを支配する審問官の「異端に対する極端な締め付け」に対して蜂起を促すもの。支配者側から見れば非常に危険な内容の手紙だ。この手紙を印刷しようとしたクラース・フーテンは逮捕され、一緒にいた息子のステルムは手紙の内容を活字に組んだ「版盤」を持って逃げ出す。版盤がある限り、いつでも印刷が可能なので、ステルムは現代でいえば指名手配の身になる。そんなステルムを偶然助けてくれたのは、下水道に住んでいる少女マリーケ。マリーケは数年前に母を亡くし、船長である父がいつか戻ってきて幸せに暮らせると期待して、逞しく命をつないできたのだ。ステルムは、マリーケから「母が残した日記」を見せられ、文字が読めない彼女に読んであげる。しかし、そこには、マリーケの父が航海中に波にさらわれて亡くなったと書かれていて、彼女はショックを受ける。ステルムは、少しでも慰めようと文字を教え、2人は仲良しになる。逮捕されたストルムの父は、広場で火あぶりの刑に処せられることが決まり、その告示文が張り出されると、今度は、ストルムがショックを受ける。ストルムは父を救おうと、マリーケと一緒にルターの手紙を印刷し、処刑の前に街中に貼り付ける。そして、火刑が始まると、市民に蜂起を呼びかけ、父を助け出すことに成功する。ヴィッテンベルクに移住した一家と、同行したマリーケは、そこで幸せな生活を送る。

映画の題名にもなっているストルムを演じるのは、デイフィ・ゴメス(Davy Gomez)。堂々たる主役だが、映画はこれが初出演。2003年生まれで、映画の初公開は2017年1月なので、2015年の撮影とすれば映画の設定と同じ12歳となる。もう1人目立つのは、出番は非常に短いが、デイフィより ずっと可愛いデュコ役のセム・フォン・ブーツラー(Sem van Butselaar)。こちらは、3本のショート・ムービーに出た後、この映画に出演している。生年は不明。あと、ストルムに協力するマリーケを演じるジュナ・デ・レーウ(Juna de Leeuw)は2001年生まれ。デイフィより2歳年上だが、観ていてそんな感じはしない。

日本では馴染みが薄いので、映画の背景を解説しておこう。映画の舞台となるのは、1521年のアントウェルペン〔英語読みアントワープ〕。当時、現在のオランダとベルギーとフランス北辺部は、神聖ローマ皇帝カール5世 (スペイン国王カルロス1世)の支配下にあった。そして、そのスペインはカトリックの本拠地の1つだった。一方、ドイツでは、マルティン・ルター(1483-1546)が1512年(29歳)にヴィッテンベルク大学の聖書教授になった。ルターは、1517年からマインツ大司教が大々的に販売を始めた贖宥状〔煉獄の霊魂の贖宥/映画の中でも高額で売られている〕に疑問を抱き、『95箇条の提題〔95 Thesen〕』をヴィッテンベルクの城教会の門扉に掲示する(右の絵)。ラテン語で書かれていた『95箇条の提題』は、すぐにドイツ語に訳されて社会に影響を与え始める。ルターは、さらに、1520年に『キリスト教会の改善』、『教会のバビロン捕囚』、『キリスト者の自由〔Von der Freiheit eines Christenmenschen〕〔映画にもでてくる〕などの宗教改革的著作を発表し、翌1521年、ローマ教皇レオ10世はルターを破門する。これが、映画の舞台となる年だ。そんなルターが、アントウェルペンの市民に読んでもらうように送ったのが、映画の題名にもなっている「炎の手紙」だ〔この部分は、映画の創作〕。1521年のアントウェルペンは人口55,000人弱〔データのあるのは1526年で55,000人〕アントウェルペンは「16世紀前半より成長を遂げ、1560年にはアルプス以北における最大規模の都市になった」と書かれている(右の版画は16世紀のアントウェルペン)。最大といっても、1560年の人口は高々10万人〔1550年のデータでは、パリ210,000人、ナポリ209,000人、ヴェネツィア171,000人〕〔同時期の京都は約10万人〕。アントウェルペンは、「宗教的にも寛容で、ユダヤ教正統派の大規模なコミュニティも形成されたほか、イベリア半島を追われた『マラーノ〔スペイン語で「豚」:キリスト教に改宗したユダヤ人〕』の亡命先や、プロテスタントの拠点となった」とも書かれている。1514年には、ヴィッテンベルクの修道士たちにより修道院付き礼拝堂がアントウェルペンに建てられた〔映画にもでてくる/1529年に拡張され、カトリックの聖アンデレ教会(Sint-Andrieskerk)となった→だから、映画の中で「聖アンデレ」と呼ぶのは矛盾している〕。アントウェルペンは、「国際的な商業拠点として出版も盛んで…宗教的に寛容な性格のためプロテスタントの文献も多く出版された」ともある。その結果誕生したのが有名な印刷・出版屋。この映画の主人公と偶然にも同じだ。有名なプランタン=モレトゥス工房は、現在ユネスコの世界遺産になっている。内部に展示されて印刷用の装置は、映画に出てくるものと同じだ(右の写真)。なお、映画の半世紀後、状況は一変する。スペイン王フェリペ2世はプロテスタントを弾圧。ネーデルラント諸州は1568年、スペインに対して反乱を起こす。1576年、アントウェルペンはスペイン軍の略奪を受け、ヘントの和約で一旦は小康状態となるが、ネーデルラント総督アレッサンドロ・ファルネーゼは1579年に南部諸州(現在のフランス北辺部、ベルギーのフランス語圏)をスペインに帰順させたのに続き、北部7州プラスα〔この中にアントウェルペンが含まれる〕との「八十年戦争」に突入。1585年にはアントウェルペンを降伏させた。降伏の条件の一つは、プロテスタント市民の退去(2年間の猶予付き)。そのほとんどは、ネーデルラント連邦共和国に移住した〔以後、アントウェルペンに代わり、アムステルダムが商業・金融の中心地となった〕。その後、アントウェルペンは、1830年、オランダからのベルギー独立を目指す反乱軍によって占領され、ベルギー領となり、今に至っている。

この映画では、下水道が大きな役割を占めている。下水道と言えば、パリを一番に思い浮かべるが、アントウェルペンにも立派なものがあるとは知らなかった。調べてみたら、「Antwerpse ruien」で、画像が山ほど出てくる(右の写真が一番分かりやすい)。アムステルダムでは1930年代まで人糞は樽に詰めて川に投機していたとあったので、歴史の古いアントウェルペンの方がよほど進んでいた。写真の煉瓦下水道は16世紀の築造とあるので、映画は時代錯誤ではない。有名なポーランド映画『ソハの地下水道』(2011)は7割がセット、残りのシーンは実際の下水道での撮影だと書いてあったが、この映画ではどうなのであろう? 私が興味本位でパリ下水道博物館に潜った時は、出た後に服が臭くてたまらなかった。

もう1つ。主役の2人が登るアントウェルペンの聖母大聖堂の塔についても触れておこう。先日、パリのノートルダム〔聖母〕大聖堂が火災に見舞われたが、被災を免れたファサードの双塔の高さは69メートル、燃え落ちた尖塔の高さは91メートル。これに対し、アントウェルペンの塔の高さは123メートル。2人のこの塔のかなり先端に近い場所の、展望バルコニーのような場所に行く(左側の写真の矢印)。しかし、実際の塔の頂部には、このような張り出しはない(右側の写真の下3分の1)。その他の構造はそっくりなので、実物を基本に、ここだけ付け足したのであろう。因みに、大聖堂の塔の高さを調べてみたら(20世紀完成のものは除く)、①161.5m(ウルム,独)、②157.4m(ケルン,独)、③151.0m(ルーアン,仏)が高さ150m以上(現存するもの)。私は全て行ったことがある。参考までに、このうちウルム大聖堂を紹介しよう。768段の階段を登ると高さ143メートルの地点にある小さな展望台に辿り着く(左の写真の紺色の矢印の部分)。簡単な手すりがついているだけの一周通路だ。そこに行くまでに登って行く螺旋階段を写したのが中央の写真。矢印のドアの向こうに急傾斜の螺旋階段がある(この中間地点の場所は、左の写真の黄色の矢印)。何れの場所にも防護ネットは全くない〔現状は知らない〕。一番上から撮った景色が右の写真。手前に低く映っている双塔(Chortürme)は高さ86メートル。迫力満点だ。


あらすじ

映画の冒頭、馬に乗った6名の黒装束の騎士が早春の雪原を走り山中の町に向かう。ヴィッテンベルク、1521年と表示される〔3枚目の写真参照/因みに、ヴィッテンベルクはもっと開けた場所にあり、こんな山の中ではない〕。次のシーンでは、修道院の中でルターが1通の文書を作成している。書き終わったルターは、それを巻くと、1人の修道士に「気をつけるんだ、友よ」と言って渡す(1枚目の写真)。修道士がルターの部屋を出ると、騒々しい音がして先ほどの6名の騎士が乱暴に入って来たので、急いで柱の陰に隠れてやり過ごす(2枚目の写真、文書は黒い筒の中に入っている)。騎士達が来た理由は分からない。ルターの破門の回勅『デチェト・ロマヌム・ポンティフィチェム』は、1月3日付なのでこの通知なのだろうか? それを受けて神聖ローマ皇帝カール5世によって開催されたウォルムス喚問(1月27日~5月26日)まで連行しに来たのだろうか? 何れにせよ1月なので雪原と一致する。文書を託された修道士は、騎士達が来た道とは逆方向に馬を飛ばす(3枚目の写真)。そして、題名が表示される。
  

場面はすぐに、アントウェルペンに切り替わる。場所は、とある印刷工房。1人の少年が、活字箱から文字を選び、組版用のステッキと呼ばれる木枠に並べている。この少年が、映画の題名になっている12歳のストルム〔Storm〕だ。一方、父の方は、版盤に乗せられた1ページ分の活字に、インク・ボール〔羊革の中に木綿や髪の毛などをつめて丸めたもの〕に付着させたインク〔油煙や亜麻仁油に秘伝の物質を加えて煮込んだもの〕を塗り、紙〔木綿ボロを叩解させたもの〕を置き、人力で木製のバーを回転させ、そのプレス〔圧迫力〕で紙にインクを付着させる。父は、刷り上った紙を プレス機からそっと外す(1枚目の写真)。ストルムの方は、ステッキに並べ終えた活字を順次まとめ(2枚目の写真)、最後の段階としてゲラと呼ばれる木箱に移し、箱の周りを麻紐で縛る(3枚目の写真)。完成した組版を、父に見せて自慢しようと意気揚々と歩いて行くが、床に置いてあった手桶につまずいて転倒し、活字が床に散乱する。呆れ顔の父に向かって、「1ページ分できたんだ」と言うが、父からは、「その活字は使い物にならん」と言われてしまい、「ちゃんと戻すから」と謝る。父は、「今夜やっておくから、お前は掃除して 家に帰れ」と命じる。
  

そこに、旧知のオーウィンという売れない詩人がやってきて、印刷を頼んであった詩集を受け取る。ストルムは、活字を拾うのをやめ、さっき別の男が持ってきた原稿を盗み見ようとする(1枚目の写真)。彼は、何にでも興味がある。それは、ルターの『教会のバビロン捕囚』のオランダ語訳だった。印刷屋の父は、確信的なルター派ではないが、旧弊なカトリック信者でもなく、どんなものでも引き受けている。オーウィンは本の出来栄えに感謝するが(2枚目の写真)、父は、感謝よりもお金が欲しい。50部作るのに2週間かかったと仄めかすが、オーウィンは、「悪いなクラース〔父の名〕、僕が働いてないのは知ってるだろ」と、金などないと言う(3枚目の写真)。父:「霞を食うだけじゃ生きられない。家族がいる」。「この本で、僕はアントウェルペンで一番有名な詩人になるに違いない。そしたら利息をつけて返すよ」〔この詩集は、オーウィンの初めての詩集だろう。父が2作目もタダで作るとは思えない〕
  

ストルムは、父に命じられたように、一人で帰途につく。途中の路地には豚がいる(1枚目の写真、矢印)。それが、当時のアントウェルペンの普通の姿だったのだろうか? ストルムが歩いている間にだんだんと暗くなるので、工房と自宅とはかなり離れているらしい。彼が、広場にさしかかると 人々が群がっている。ストルムが掻き分けて前に出ると、そこでは焚書(ふんしょ)が行われていた(2枚目の写真)。燃やされているのは、ヒルスという印刷屋にあった本。命令を下したのは、帝国審問官フランツ・フォン・デル・フルスト(Frans Van der Hulst)〔実在する人物だが、歴史上彼がこの地位に任じられるのは1年後の1522年4月〕。ストルムは、家に帰らず工房に戻り、焚書のことを父に話す。心配になった父がストルムと一緒に広場に行くと、火は既に消え、山になっていた本は、背の低い黒い燃えカスになっている。父が、掲示板に貼ってある新しい告示を読む。そこには、「本日より、アントウェルペンに着任した審問官フランツ・フォン・デル・フルストによる取調べが開始される」と印刷されていた。ストルムは、「審問官って何なの?」と父に尋ねる。父も分からないので、「人々を取り調べる人のことだ」と曖昧に答える。「何を取り調べるの?」。「人々が、良きカトリックか、そうでないかを調べる」。「ヒルスさんは、そうじゃないの? 燃やされた本は、禁書なの?」。「なんで わしに分かる?」。「父さんは、禁書を印刷してる?」。「するもんか」。家に帰ったストルムは、ヒルスの店の本がすべて燃やされたと話す。それを聞いた母は、「恐ろしいことね、坊や」とストルムの頬を撫でて恐怖を和らげようとする。その後の父と母の会話の中で、本を燃やすことは罪だという父と、中身によるという母の立場の違いが明白になる〔母は、熱心なカトリック教徒〕
  

次は、聖母大聖堂での日曜ミサ(1枚目の写真)。ストルムの一家も当然いるが、ストルムは司教の言葉など どうでもよく、友達のデュコの方ばかり見ている。ミサが終わると献金の袋が回される。司教は、2つ目の塔の建設のためと強調し〔結局、2つ目の塔はできなかった〕、お金のない父も なけなしのコインを入れる。ミサが終わると、デュコは、「ストルム、何してたんだ?」と訊く(2枚目の写真)。一緒にいたデュコの母も、「久し振りね」と声をかける。ストルムの母は、「工房で父さんを手伝ってるの。毎日よ」と自慢する。その時、贖宥状を売る声が聞こえてきて、母の関心はそちらに移る。母は、買ってくれるよう夫に頼むが、「とても高価なんだ」と断られる。その時、デュコが、「ストルム、来いよ」と呼び、野外マーケットに連れて行く。そして、「ここで待ってろ」と言うと、ニコニコしながら店に近づいて行き(3枚目の写真)、リンゴを1つ盗む。売り子はすぐに気付き、「こら、こそ泥!」と叫んだので、デュコは慌てて逃げ出す〔デュコは見つからないと思っていたのだろうか?〕。リンゴ1個で兵士が2名追いかけ、デュコは必死に走る〔恐らく、捕まらなかった〕
  

夜、ストルムが寝ようとしていると、夫婦の言い争いが聞こえてくる。問題は、夫が贖宥状を買わなかったこと。夫は、「ベアトリスはいい女(ひと)だったから、もう天国にいる」と言い〔ベアトリスは妻の姉か妹で、最近亡くなったらしい〕、さらに、「贖宥状を買えば、煉獄から早く出られると思ってるのか?」とも訊く。「永久に煉獄にいさせたいの?」。「そうじゃないが、買う余裕がない」。妻は、矛先をオーウィンに向ける。本を印刷させてもお金を払わない上、カトリックの教義に反する悪影響を与えていると誹謗する。ストルムはオーウィンに会って、いろいろ訊いてみようと思い立ち、窓から家を抜け出すと、寝静まった夜の街を走って行く(1枚目の写真、行く手に見えるのが聖母大聖堂の1つしかない塔)。ストルムがドアをノックすると、オーウィンはまだ起きていて、すぐに中に入れてくれる。オーウィンは、今日父からもらった本を手に取る、「この本が僕を成功に導いてくれる。貧しい生活ももうすぐ終わる」と言い、さらに、「君も、将来は、一流の印刷屋だ」と持ち上げる(2枚目の写真)。その後で、ようやく、こんな時間に一人で来た訳を尋ねる。ストルム:「両親が言い争ってたから」。オーウィン:「何を?」。「よく分からないけど、教会とか贖宥状について。父さんは逆らってるみたい」。「君のお父さんは正しい」。「マルティン・ルターって、誰?」。「偉大な思想家だ。教会を変えようとしている」。そう言うと、1冊の小さな本をストルムに貸す。『キリスト者の自由』だ。「これは禁書だ。誰にも見せるな」(3枚目の写真、矢印)。家に戻ったストルムは、ベッドに戻るとさっそく読み始める。眠くなると、本の枕の下に隠す〔禁書だと注意された割に、隠し方が甘い〕
  

翌日。再び工房で。ストルムは、試しに木のバーを回転させて刷ろうとするが、どれだけ力を入れて引っ張ってもびくともしない。助手がイスを出してくれ、ストルムはその上に乗って引っ張るが、それでも動かない(1枚目の写真、矢印はバーの先端)。見かねた助手が片手を添えると、難なく回転する。紙を活字に押し付ける力が如何に強いかがよく分かる。その時、オーウィンが店に入って来て、父と何事か話す〔プレス機のある作業室と、店の入口の部屋はガラスで仕切られている〕。話はすぐに終わり、父はドアを開けると、「ちょっと出かけて来るから、ヘルマン〔助手〕を手伝ってろ」と声をかけ、2人で出かける。父の行動に興味をそそられたストルムは、2人の後をこっそり付けて行く。2人が向かった先は、小ぶりの教会堂〔ルター派の修道院付き礼拝堂〕。中には大勢の市民が集まっている。1人の修道士が前に歩み出ると、「みなさん、悪いお知らせがあります。我らが兄弟、マルティン・ルターが破門されました。だからと言って、彼の教えに従うのをやめるわけではありません」(2枚目の写真、矢印がストルム)。父は、ストルムに気付き、「ここで何してる?」と詰問する。「何も」。オーウィンも寄ってくる。「僕… ただ…」。「今すぐ、家に帰れ」。オーウィンは、そんな父を止める。だから、帰りは3人一緒だ(3枚目の写真)。オーウィンは、「クラース、この子は好奇心旺盛なだけだ。嬉しいことじゃないか」と父に言うが、父は、「このことは誰にも言うな、特に母さんには」と釘を刺す。
  

しかし、家に帰ったストルムを迎えたのは、怒りに満ちた母だった。ドアの正面のテーブルに座った母は、「どこでこれを手に入れたの?」と、厳しい声でストルムに訊く。「あなたが、彼に与えたの?」。「いったい何なんだ?」。父は、本〔オーウィンがストルムに貸した本〕を取って1ページ目を見ると、すぐにストルムを詰問するように振り向く。ストルム:「見つけたんだ」(1枚目の写真、矢印は本)母:「それは、冒涜なのよ」。「マルティン・ルターは、僕らに読ませるために書いたんだ」。「私の家で、その名前は口にしないで」。父は、「セシリア、案じるな。ただの好奇心だ」と取り成す。「オーウィンの影響ね? それとも、あなたなの?」。母は、本を手に持つと、ストルムに向かって、「信仰の道は一つだけしかない。他のことを言う人は 誰であろうと間違ってる。もたらされるのは禍(わざわい)だけ」と言い、本を暖炉の中に投げ込む。あまりの一方的な行為に、父は「セシリア!」と怒鳴って立ち上がる(2枚目の写真、矢印の先で本が燃えている)。ここで、場面は、焚書の行われた広場に面した建物の中へと移行する。長いテーブルの端に座った帝国審問官フルストは、「神聖ローマ帝国皇帝カール5世陛下は、間もなくアントウェルペンにお越しになる。異端審問を強化せねばならん」と部下に訓示する(3枚目の写真、矢印がフルスト)。
  

翌日の工房。ストルムが版盤の活字を木槌でそっと叩き、表面が均一の高さになるよう調整している。恐らく、これが初めての試みだったようで、父が慎重に見守っている(1枚目の写真、矢印は版盤、手には木槌を持っている)。その時、ドアベルが鳴って、1人の男が入って来る。それは、修道士だった。父は、ガラスのドアを閉めて、2人だけで話す。ストルムは、何事かと興味津々だ(2枚目の写真、矢印は修道士、ガラスの仕切りの構造がよく分かる)。そこからは、ストルムの視点からの映像。だから、何を話しているのかは分からない。修道士は、1枚の巻いた紙を取り出して父に見せる〔映画の冒頭、ルターが修道士に託した紙〕。父は、断るが、かなりの量のお金が入った袋を見せられ、母が贖宥状を欲しがっていたことも考え、印刷を引き受ける。修道士が出て行くと、父は助手を早退させ、手伝いたいと申し出たストルムには、「お母さんに伝えてくれ。大事な仕事が入ったから今夜は帰れないと」 と命じる。そして、お金の袋を渡し、「これを渡して、ベアトリス叔母さんの贖宥状を買うようにと言うんだ。工房に来させないようにしろ。いいな?」(3枚目の写真)。父は、ストルムを体よく追い払う。
  

家に帰ったストルムは、母にお金を渡し、母はすぐに贖宥状を買いに行く。家に戻った母は、幸せそのものといった感じ。しばらくすると夕食が始まる。ストルムは、父が何をしているか知りたくてたまらないので、「父さんは、仕事をしてると食べるの忘れちゃう」と母に言い、ご機嫌の母は、ストルムに夕食を持たせて送り出す(1枚目の写真、矢印は夕食)。ストルムが工房に行くと、ドアが閉まっているので裏口に向かう。そちらの方は、ロウソクが点り、木槌で叩く音も聞こえる。ストルムは中に入ると、びっくりした父に、「お腹が空いてると思って」と食事を渡しかけ、刷り上ったばかりの紙に目をやり、「マルティン・ルター? これ、何の原稿なの?」と思わず訊いてしまう(2枚目の写真)。父:「食事をありがとう。だが、すぐ家に戻れ」。「これ、禁書だよ」。「帰るんだ」。その時、ドアを乱暴に叩く音がする。そして、「審問官の名において、開けろ!」との厳しい声と、猛犬が吠える音も聞こえる。父は、刷り上った紙をストーブの上に置いて燃やそうとし、「ストルム、すぐに帰れ!」と命じる。外では、審問官の副官が、兵士達にドアを破って入るよう命じる。ストルムは、プレス機に入っていた版盤を取り出すと、壁の後ろに隠れる(3枚目の写真、矢印は版盤、左に突入した兵士が見える)。兵士が燃えている紙を消そうとしている隙に、ストルムは上着を脱ぐと、版盤を二重にくるみ、裏口から逃げ出す。
  

ストルムの逃亡は、すぐに兵士に見つかり、追われる身に(1枚目の写真、矢印は版盤)。しかし、豚小屋の藁の中に隠れて追っ手をやりすごす。一方、父は、牢獄に放り込まれる。工房を襲った副官は、ルターの手紙を修復し、審問官に見せる(2枚目の写真)。そして、「助手が、活字の版盤を持って逃げたようです」と付け加える。審問官は、「この手紙は、絶対に印刷させるな」と命じる。審問官は、工房から押収されてきた文書類を調べ、中にオーウィンの詩集があることに気付く〔伏線〕。ストルムは追っ手をまいた後、自宅に辿り着く。母に「どこにいたの?」と訊かれたストルムは、「奇襲された。当局だ。父さんが連れてかれた」と答える(3枚目の写真)。すると、工房の時と同じように、ドアが激しく叩かれる。「フーテン、ドアを開けろ!」。ストルムが窓から覗くと、先ほどと同じメンバーだ。「廷吏の奴らだ」。「何言ってるの?」。「逃げないと」。「法の名において開けろ!」。母は首にかけていた十字架のネックレスをストルムにかけ、「これが守ってくれる」と言ってキスし、裏口から出て行かせる。母はドアを開ける。中にはストルムはいないし怪しいものもないので、副官と兵士達は引き揚げる。
  

ストルムが向かった先はオーウィンの家。しかし、そこにも兵士がいて乱暴にドアを叩いていた(1枚目の写真)。どしゃぶりの中、次に向かったのが助手のヘルマンの仮小屋〔建物内の木の仕切り〕。ストルムがそこで見たものは、雷光に照らし出された無残な死体だった(2枚目の写真)。行き場を失くしたストルムが雨の中で迷っていると、怪しい連中2人に襲われ版盤を入れたバッグを奪われそうになる(3枚目の写真、矢印はバッグ)。
  

それを救ってくれたのは1人の少女だった。投石器を回転させ(1枚目の写真、矢印は石の入った部分)、男たちの頭に命中させて昏倒させる。しかし、目的はストルムを助けることではなく、バッグを奪うことだった。少女は、バッグを奪うと逃げ出す。ストルムも、取り返そうと必死に後を追う(2枚目の写真、矢印はバッグ)。ストルムは、少女を追って、下水道に降りていく(3枚目の写真)。そこは、ストルムが見たこともない場所だった。下は、天井がアーチ状になったトンネルがどこまでも続き、底には汚水が溜まっている。ストルムがすべって前のめりに転んだ時、顔の前にあったものは、2匹のネズミの死骸の上で絡み合うミミズだった(4枚目の写真、矢印)。ストルムは、少女が手に持つ松明がチラチラ見えるのを頼りに、後を追い続ける。途中にあった簡単な「板橋」は、汚水の深い場所に少女が置いたものだろう(5枚目の写真)。すると、行く手の壁に、光が漏れる穴が見えてくる。
    

ストルムが穴に近づいた時、1本の糸を踏む。それは、余所(よそ)者の接近を少女に知らせる警報装置だった。ストルムは穴から中に入る(1枚目の写真)。中は、煉瓦の窪みすべてにロウソクが灯され、地下というのにストルムの家の中より明るい。ストルムが、部屋の真ん中に置いてあったバッグを取り上げようとすると、隠れて待ち構えていた少女が、背中にナイフを付きつける。ストルムは、おとなしく両手を上げる。そして、そのままの格好で180度回転し、少女の方を向く。少女はストルムの喉にナイフを当てる(2枚目の写真、矢印)。「活字の版盤が欲しいだけだ。バッグの中に入ってる。布で包んである」。少女は、何を言っても黙ったまま、ナイフも下げてくれない。「とっても大事なものなんだ」。しばらく後のシーン。ストルムは版盤の包みを抱え、少女の前の寝床〔布を何重にも敷き詰めた場所〕に腰を降ろしてウトウトしている。ストルムは本当に眠ってしまい、目が覚めると、真上にある聖母マリアの像が目に入る。体を起こすと、少女は布をほどき、活字の埋め込まれた版盤に触っている。彼女にとっても、版盤を見るのは初めてなのだ。そして、それが、彼女には何の価値のないものであることも分かる。ストルムは、活字が外されるといけないと思い、思わず版盤に手を伸ばすが、少女は止めようとせず、版盤は無事ストルムが抱え込む。ストルムは、そこに何が書いてあるのかに興味があるので、何とか読もうとする〔字が左右逆になっている〕。それを見た少女は、「字が読めるの?」と尋ねる。ストルムは頷く。「ここで、一人で住んでるの?」。今度は、少女が頷く。「長いの?」。少女は、バッグの中にあったストルムのパンを食べているが、ストルムが食べたそうにすると、半分ちぎって(3枚目の写真、矢印はパン)、投げてくれる。「僕、ストルムだよ。ストルム・フーテン。父さんは、昨日の夜、廷吏に捕まった。今は、僕を捜してる。家には帰れない」。「それ、読むために盗んだの?」。「違うよ、泥棒じゃない。父さんのなんだ。印刷屋だから。これ、すごく大事な手紙だよ。助手の人は、このために殺されちゃった」。そこまで話し、「僕、ここを出てかないと」と言って立ち上がると、少女はまたナイフを向ける。「どうしたいの?」。「ここに住んでること、誰にも知られなくない」。「誰にも言わない、誓うよ」(4枚目の写真、矢印は版盤)「お願いだ。父さんを助けないと」。少女は、ナイフを下げる。「どこに行くの?」。「友達を見つけないと。きっと聖アンデレ教会にいる」〔ここが、最初に指摘した矛盾点〕。「行き方知ってるわ。地下からね」。少女は、ストルムが首にかけている十字架のネックレスを要求する。少女は、松明に火を点けると、「行くわよ」と声をかける。
   

少女は、下水道を通り、階段を上がった所にある鉄柵をくぐり抜けて中に入る〔柵の一部が開き、下に小さな隙間ができる〕。そこは、クリプト〔教会堂の地下にある聖者や殉教者の遺骨を納める礼拝堂〕だった。ストルムは、来たことがないので、どこにいるかさっぱり分からないが、階段を登ると、そこは いつもミサに行く聖母大聖堂だった。ストルムが行きたいと思っていた場所と違っているので、「聖アンデレに行くんじゃなかったの?」と訊くと、「後で」の一言。「僕は入らないよ。この教会が父さんを逮捕させ、ヘルマンを殺したんだ」。少女は構わず中央交差部〔十字型の教会の中心、内陣の手前〕に向かって真っ直ぐ早足で進み、その右手に安置されている巨大な聖母マリア像の前で祈る(1枚目の写真)〔少女の地下の隠れ家にも小さなマリア像が祀ってあった〕。少女は、ストルムから奪った十字架をマリアに示し、「あの子がこれをくれました。正直に言えば奪ったのです。聖アンデレに行きたがっています。彼は手紙を持っていて、読み方を知っています」。ここまでマリア像に話しかけたところで、大きな扉の開く音が聞こえる。少女は、マリア像の前に捧げられた多くのロウソクの火を吹き消し、持てるだけ奪って逃げ出す〔少女の隠れ家がロウソクで明るいのは、このため〕。クリプトに戻ったストルムは、「いつも 教会からロウソクを盗んでるの?」と訊く。「そうよ。次に来る時には、マリア様は新しいのをいっぱい持ってるわ。マリア様は、誰でも助けて下さるの」。「なら、なぜ僕の父さんを助けない?」。「まだ、聖アンデレに行きたい?」。これで、ストルムは何も言えなくなる。2人は再び下水道を歩く。「そんなに盗んで、煉獄が怖くないの? それとも、お金も盗んで贖宥状を買うわけ?」。その時、上方に穴が開いた真下に着く。「この上が、マーケットよ」。「母さんのすぐそばだ」。少女は下を向く。「お母さんはどこにいるの?」。「死んだわ」(2枚目の写真)。「お父さんは?」。「生きてる」。「なぜ、君を世話してくれないの?」。「できないからよ。海に出てるの。いっぱいお金を持って戻ってくる。そしたら、家を買って一緒に住むの」。少女は、下水道の放流口をよじ登って通りに出る。ストルムもそれに続く(3枚目の写真)。
  

街の中では兵士が見張っている。ストルムは、それを見ると怖くて進めなくなる。「地下から連れて行ってくれないの?」。「地下からは、これ以上近づけない」。「見分けがつかないようにしないと」。問題は、ストルムが来ている青緑色の上着が目立ち過ぎること。少女は、軽業師のように近くの家の2階に入り込むと、どこにでもいそうな庶民の女性の服を盗んできて、ストルムに着せる。そして、2人並んで聖アンデレを目指す(1枚目の写真)。兵士のそばを通る時にストルムが頭巾で顔を隠そうとすると、「普通になさい。顔を隠しちゃダメ」と注意する。兵士は、女性だと思うと顔など見ないからだ。2人は、無事、教会の中に入る。前と同じ修道士が、集まった市民に話しかけている。「我らが兄弟、マルティン・ルターが常に話していたように、聖書には神の言葉が書かれています。その言葉を、そのまま受け取りましょう。そして、神にのみ仕えるのです。聖人の骨を崇拝したり、ローマの教皇を敬うことは、神のご意思ではありません」。ストルムはオーウィンがいないかと探すが、姿はない。「マリアは、キリストを生んだ ただの女性です。ですから、マリアの像が教会にあるのは正しいことではありません」。その時、教会の正面扉が乱暴に開かれ、堂内に光が溢れる。中に入って来たのは、審問官と副官、及び、兵士達。審問官は、兵士に命じて修道士を逮捕・連行させる(2枚目の写真、黄色の矢印は修道士、青の矢印が審問官、ストルムたちは背が低いのでどこにいるか分からない)。副官は、「こうした集会は、今後禁止する。違反すれば厳罰に処される。審問官のご命令だ」と通達し、市民達に「出て行け!」と怒鳴る。ストルムも半分顔を隠して審問官の前を素通りする(3枚目の写真)〔審問官はストルムの顔を知らない〕
  

教会の中ではバレなかったが、外に出たストルムの変な姿を見つけたデュコの母親が、「ストルムなの? 何の真似?」と言って(1枚目の写真)、頭巾を外してしまい、それを見た兵士がストルムだと気付き、捕まえようとする。ストルムと少女は、全速で逃げ出す(2枚目の写真)。この後の、俯瞰撮影は、なかなかリアル(3枚目の写真、黄色の矢印の左上がストルム、左下が少女、後ろに4人の兵士が続く)。ストルムは路地に置いてあった籠の中身ををぶちまけ、手当たり次第に物を投げつける。手押し車で兵士を邪魔してくれる人もいる。最後は、馬の腹の下をくぐり抜けて差を拡げ、壁に開いた斜めの穴から下水道に滑り降りる。この抜け道は、兵士には気付かれず、2人は難を逃れることができた。
  

隠れ家に戻った2人。少女は、「ほんとにお尋ね者なのね」と驚く(1枚目の写真)。少女は、先ほど教会の中で修道士が話していた言葉が気に食わない。少女は、マリア様が大好きだからだ。「なぜ、あの修道士は、教会からマリア様の像を外せと言ったの?」。「ルターがそう言ったからさ」。「バカげてる」。そうは言っても、少女は、「あんた、しばらくここにいた方がいいわ」と 庇おうとしてくれる(2枚目の写真)「ここにいれば、誰にも見つからない」。ストルムは返事をせず、版盤を抱えたまま、何とか読もうとする(3枚目の写真、矢印は聖母マリア像)。
  

それを見た少女は、意を決すると、マリア像の後ろにあった隠し場所から 布で大事にくるんだ日記帳を取り出し、ストルムに渡す。ストルム:「これ、盗んだの?」。「違う。母さんの。あたしのことを書いてた」。そして、「読んでくれる?」と頼む(1枚目の写真、矢印は日記帳、1つ前の写真でマリア像の会った場所に穴が開いている)。ストルムは、すぐに読み始める。「1514年11月18日、日曜日」〔6年と数ヶ月前〕「愛しいマリーケ〔Marieke、Mariaのドイツ式変形〕、今年は冬が早い。あなたの毛布で、コートを作ってあげたわ。これで、どこにでも自慢して出て行ける。私の可愛い元気なお嬢ちゃん」(2枚目の写真)。ストルムは、日記の最初のページに戻る。「1507年7月10日」〔13年半前〕「1年で最も美しい日。ポルトガルの船が今日入港した。あなたのお父さんは船長よ」。それを聞いたマリーケは、「私、1年後に生まれたの」〔彼女は12歳。ストルムと同い年〕「父さんはポルトガルで一番ハンサムな男性で、世界一の船乗りなのよ」と誇らしげに言う。「ずっと海に出たきりなの?」。「ずっとよ」。「どうして?」。「新世界を発見するの。コロンブスみたいに」。ストルムは、今度は真ん中のあたりを開く。そして、少しちらと見て日記を閉じる。「どうかしたの?」。「別に」(3枚目の写真)。「続けてよ」。「後で」。マリーケは、心配になったので、日記を取り上げて読もうとするが、全く分からない。そこで、「お願い」と頼む。「よくないことが書いてある」。そして、「それでも いい?」と確認する。「1516年冬」〔5年少し前〕「あなたは8歳。でも、まだ小さくて傷付きやすい。だから、あなたにはとても話せないわ。お父さんが、私の最愛の人が 非業の死を遂げたなんて。嵐で波にさらわれてしまったの。生きてるなんて信じさせてしまったこと、ごめんなさい」。「そんなの嘘よ。そんなこと書いてない」。「嘘じゃない。お母さんが そう書いてる」。マリーケは、泣きながら日記帳を取り返し、床に投げ捨て、下水道に出て行ってしまう。ストルムは追いかける。途中で、路地にいた男が汚物の入った樽を下水の舛に空ける、それがストルムの目の前に滝のように落ちてくる。だから、下水道の中はすごく不衛生、かつ、悪臭がひどいに違いない〔コメント:下水に、水洗トイレの汚物が直接流れ込むようになるのは19世紀の中葉〕。マリーケが向かったのは聖母大聖堂。彼女は、大好きな聖母マリア像の前を素通りし、ドアから壁の中に消える。ストルムも後を追う。中は狭い螺旋階段がどこまでも続く。
  

螺旋階段を登り詰めた先には、バルコニーがあり、マリーケは、そこに立って、港に停泊している帆船を眺めている〔この塔に関するコメントは、冒頭の解説参照〕。ただ、そこに行くためには、幅30センチほどの木の板を渡らないといけない。ストルムは、恐る恐る板を渡る(1枚目の写真)。ストルムが渡り終えると、マリーケは まだ泣いていた。そして、ストルムに、「出てって。一人にして」と言う。しかし、ストルムは、逆にマリーケが座っている横に行くと、一緒に船を見る(2枚目の写真)。ストルムは、思い切って、「お父さんの名は?」と尋ねる。「アルフォンソ」。しばらくすると、「あんな船で でかけたの」と1隻の船を指差す。「母さんとあたし、さよならって 手を振った」。そう言うと、さらに泣く。ストルムは、黒いチョーク〔細い木炭〕を使って 手すりの石材に「ALFONSO」と書き、「これがAだよ」と教える。マリーケは、「読み方、教えてくれる?」と訊き、ストルムが微笑む(3枚目の写真)。2人は、これで友達となる。
  

この頃、審問官は、修道士の尋問にあたっていた部下と話していた。部下:「プロースト神父は告白しました」。「2日後、広場で火あぶりの刑に処すことにしよう」。「閣下、プロースト神父には多くの追随者がおります。処刑すれば暴動が起きるかもしれません」。「ならば、他の異端者を処刑しよう」。この「他の異端者」とは、ストルムの父のことだ。一方、隠れ家に戻ったストルムは、版盤の内容を写し取っている(1枚目の写真、矢印は版盤)。マリーケの方は、アルファベットの字を紙に書いてはストルムに見せている(2枚目の写真、Fを左右逆に書いてしまったので、紙を裏返しにし、火で透けて見える「正しい字」を見せている)。最後の頃には、紙に書いた「LIEVE」〔英語のsweetieに相当〕という単語を発音できるようになる〔この単語にはストルムの想いが込めれている〕。上達するにつれ、2人はじゃれ合う。そして、汚水の深い所に架けた板の上に仲良く座ると、木靴の中に火の点いたロウソクを立て、海まで流れていってマリーケの父の供養になることを願う(3枚目の写真、矢印はロウソクを載せた木靴)。
  

翌日。広場では、火刑の準備が始まっている。マリーケは、マーケットに行き、あっという間にリンゴを2つ掠め盗ると、今度はパン屋に行き、売り子が落としたパンを拾ってあげ、その直後に別のパンを拝借する(1枚目の写真)。その後で、掲示板を見ると、貼られた紙に教えてもらったストルムの家族名フーテンがあるのに気づき、紙も頂戴する。隠れ家に戻ったマリーケは、リンゴを1個ストルムに渡した後で、紙も渡す(2枚目の写真。矢印は紙)。「ほら、あんたの名がある。ちゃんと読めたのよ」。ストルムが紙を見ると、それは、父クラース・フーテンの火刑を通知する紙だった。ストルムは真っ青になる。「どうかしたの?」。「父さんが… あした広場で…」。「何なの?」。「火あぶりになる」(3枚目の写真)。マリーケは、「お父さんに会いに行かないと」と言う。「不可能だよ」。「不可能なことなんてない。さあ、行きましょ」。
  

マリーケは、ストルムを港に連れて行く。「どこに行くの?」。「あんたのお父さん、どこにいるか知ってると思う」。そして、突然、「待ってて」と言って建物の中に入って行く。出て来た時には、大きなハムの塊を持っている。「それ何?」。「これが、あんたのお父さんの所に連れてってくれる」。そう、謎めいた言葉を残すと、マリーケは岸壁に腰掛けている男に向かう(1枚目の写真、青い矢印はマリーケ、黄色の矢印はストルム、岸壁のボートの前に男が1人いる)。マリーケは、男に目的の場所まで連れていってもらう。男は、「そこだ、見えるだろ」と指で指し示す(2枚目の写真)。「じゃあ、ハムをくれ」。ストルムは、立てかけてあった梯子を伝って下の水路に降りる(3枚目の写真)。マリーケは、つないであった小さな筏のロープを外す。
  

2人の筏は、地下の水路を抜け、水城のような場所までくる(1枚目の写真、矢印)。城の水面すれすれの場所には、何箇所か小さな丸い穴が開いている。これらは、すべて囚人を入れた独房の空気抜きだ。ストルムは、穴を通るたびに、「父さん? クラース・フーテン?」と呼びかける(2枚目の写真)。何度も失敗したが、四角い窓から「ストルム」と呼ぶ父の声が聞こえる。鉄格子越しではあるが、ストルムは父と会うことができた。「あの子は誰だ?」。「マリーケ。僕を匿ってくれてる」(3枚目の写真)。「匿う? なぜだ?」。「僕も、追われてる。奴ら、ヘルマンを殺した」。「わしは、すぐにここから出られる」。ストルムは、処刑を予告した貼り紙を父に見せる。そして、「逃げないと」と言う。「マリーケが手伝ってくれる。どうやったら、そこから出られる?」。「不可能なんだ、ストルム」。「不可能なことなんてない。僕、ルターの手紙の版盤持ってるよ」。「版盤だと? 捨てるんだ。危険すぎる」。「助けるのに、使えるよ」。「危険過ぎる」。「審問官が欲しがってる」。「それはいかん。成功などせん」。その時、牢の扉が開く音がし、父はストルムに離れるよう命令する。ストルムは、「やってみせる」と誓う。
  

2人が隠れ家に戻ろうと路地を歩いていると、いきなりオーウィンがストルムの肩をつかむ。2人は抱き会う。「ストルム、無事だったか」。「その子は?」。「マリーケだよ。助けてくれてる」(1枚目の写真)。「あちこち捜したんだぞ。なぜ君の父さんは火刑になるんだ? 何をやったんだ?」。「マルティン・ルターの手紙を印刷した。版盤は僕が持ってる」。「君が持ってるって? それが何を意味するか、分かってるのか?」。「審問官が欲しがってる」。「もし、ルターの手紙が印刷され、追随者がそれを読んだら…」。「一斉に蜂起する」。「審問官は、全力で阻止するだろう。ストルム、僕にも力にならせてくれ。版盤はどこにある?」。「安全に場所に隠して…」。ここまで言って、ストルムはマリーケを振り向く。彼女は、かすかに首を横に振る。「取りに行って、渡してあげるよ」。「いいぞ。どこで会う?」。「聖母大聖堂。1時間後に」。隠れ家に戻ったストルムは、版盤をバッグに入れて出て行こうとする。マリーケは、その前に立ち塞がり、「間違ってる」と止める。「行っちゃダメ」。「行くよ。父さんを救うためだ」(2枚目の写真)。「あの男、信用できない」。「どうして、そんなこと言うんだ?」。「彼、どうして審問官のこと知ってるの?」。「街中のみんなが知ってるよ。オーウィンは友だちだ。助けてくれる」。「あたしだって、助けてるわ」。ここから、ストルムの誹謗と中傷が始まる。「そんなの嘘だ。君はルターを怖がってるじゃないか。大好きなマリア様を、全部の教会から外そうとしてるから。君には、そっちの方が、僕の父さんの命より大事なんだ」。「違うわ!」。「違わないね」。そう言い切ると、ストルムは穴から出ようとし、マリーケと激しい揉み合いになる(3枚目の写真)。争っている時、飛ばされた1本のロクソクから藁に火が点き、あっという間に燃え広がる。マリーケが茫然としている間にストルムは穴から抜け出す。残されたマリーケは、大事なマリア様が熱で融け、隠れ家が廃墟と化すのを見て、穴から脱出する(4枚目の写真)。
   

ストルムは、勝手知った下水道を抜け、聖母大聖堂のクリプトに入り、そこから地上階に上がる。一方、マリーケは隠れ家もマリア像も失い、下水道の汚水のない所に座って茫然としていたが、2日前に流した木靴がゴミで止まっているのに気付き、投石器で石をぶつけて進ませる。そして、今後のことをもう一度考える。大聖堂では、ストルムが聖母マリア像の近くまで来た時、オーウィンが現われる。「持ってきたか?」。ストルムは、バッグを開けて版盤を見せる。オーウィンは、「よくやった」と褒め、版盤を受け取る(1枚目の写真)。「どうやって印刷するの?」。その時、大聖堂の扉が開く音が響き、大勢の兵士が入って来る。逃げようとするストルムの前に現われた審問官は、ストルムの横を通り過ぎてオーウィンの前に行く。オーウィンは、嬉しそうに版盤を渡す。ストルムは、ようやく、オーウィンが裏切り者だったことに気付く〔審問官は、工房から押収した物の中にオーウィンの詩集があることに気付き、彼を買収した〕。審問官は、「よくやった」とオーウィンを褒める。ストルムは、審問官に近づいて行くと、「お願い、父さんの命を助けて」と直訴する。「版盤は手に入ったでしょ。お願いします。約束します。父さんは二度と禁書を印刷しません」。そんなことで許してくれるような審問官ではない。血も涙もない人間なので、ストルムは、即刻逮捕される。それを見たオーウィンは、「あの子は、見逃してやると言われたでしょ」と言うが(2枚目の写真)、審問官は、「異端者を? 当市の新しい詩人として、君は金持ちになる。あんな子のことなど気にするな」と、無慈悲に答える。危機に陥ったストルムを救ったのは、マリーケだった。投石器でストルムを捕らえた兵士を1人倒すと、ストルムは、残った1人を突き飛ばしてマリーケの方に走る。マリーケは追って来た兵士を置いてあった大きな燭台で叩く。兵士は、思い切り強くマリア像にぶつかる、衝撃で巨大なマリア像は倒れて砕け散る(3枚目の写真)〔どう見ても、白大理石ではなく、石膏でできたように見えてしまう〕。審問官が マリア像の破壊に衝撃を受けている隙に、2人はクリプト目指して逃げ出す。兵士達がすぐに後を追う。
  

2人はクリプトから下水道に逃げ込むが、兵士達も執拗に追ってくる。マリーケはとっさに窪みにストルムを引き入れる。足元にあった犬の死骸にネズミが集まっていたので、ストルムが悲鳴をあげそうになり、マリーケは急いで口を押さえる(1枚目の写真)。兵士達がいなくなった後、マリーケはかつての隠れ家に戻る。中は真っ暗。燃え残ったロウソクに火を点け、僅かな明かりは確保する。ストルムは、心から謝る。「オーウィンのこと… 君が正しかった。君の聖母マリア様も壊れちゃった。僕がバカだったからだ」。「マリア様が、助けてくれたのよ」。「版盤がなくなった。父さんを助けるチャンスも逃しちゃった」(2枚目の写真)。そう口にした時、卑怯者のオーウィンが話したこと〔「もし、ルターの手紙が印刷され、追随者がそれを読んだら…」〕を思い出す。「手紙を印刷するんだ。印刷屋を探さないと」。「なぜ自分でやらないの? あんた印刷屋の息子でしょ」。「だけど、工房はめちゃめちゃにされた。それに、僕には力がない〔プレス機を動かせない〕」。「助けてあげる」。第一の関門は、下水道の流出口。厳重に見張られている。マリーケは下水道に流れているゴミを集めて頭に乗せるようストルムにも指示し、そのまま出口に向かう(3枚目の写真、左がストルム)。上から見ていても、ゴミが漂ってきただけのようにしか見えないので、無事に脱出できた。後は、まっすぐ工房に向かう。
  

工房の中は散乱状態だったが、それは、手当たり次第に、兵士達が捜し回ったからで、一番大事なプレス機は破壊を免れていた。ストルムに床にばらまかれた活字を拾い上げ、必要な文字を集めていく(1枚目の写真、矢印は活字)。そして、1行ずつステッキに並べ、版盤が完成すると、2人でプレス機のバーを回転させる(2枚目の写真、矢印はバー)。こうして1枚目が見事に刷り上り、2人は抱き合って喜ぶ。マリーケは、外に出ていくと、その紙を掲示板に釘で打ちつける(3枚目の写真)。ルターの手紙の最初の太字の部分「Aan alle lieve mensen van Antwerpen gelovigen in Christus」は、「キリストを信じるアントウェルペンの親愛なる人々へ」という意味〔「lieve」は、前にも出てきたが、英語の「dear」にもなる〕
  

街中に貼られた紙は、次第に増え、多くの市民がそれに目を留める。そして、多くの人が読み上げる。「私は、皆さんに 暗黒に反抗する力を持ってもらおうと思い、この手紙を書いている。私は、確かに、カトリック教会から嫌われている。私は、多くの儀式、ロザリオの祈り、賛美歌、聖人崇拝などの廃止を望んでおり、それを非難されている。それは、その通りだ。真理は、純粋に信じる心にのみ存在する。イエス・キリスト以外のものを信じてはいけない。如何なる人も物も、代替にはなり得ない。ローマ教皇は、贖罪を金で買わせようとする傲慢で退廃的な教会を導く『只の人』に過ぎない」(1枚目の写真)「救済は、イエス・キリストによってのみ与えられる。そのために必要なものは、篤き信仰心のみ。神は光であり愛である。贖宥状では天国になど行けない」(2枚目の写真)「残酷な異端審問に抗議しよう。皆さんを恐怖で支配しようなどと妄想を抱く教会に対抗しよう。宗教独裁へと導く支配者や審問官に従ってはならない。教会の脅しに屈してはならない。私達には信仰の自由がある。不当な行為には、連携して立ち向かうのだ。今日にでも、できるだけ早く。マルティン・ルター」。読み終わった男は、「このことを皆に伝えるんだ」と仲間に言う。工房では、乾燥中の多くの紙を前にして、ストルムがマリーケに感謝のキスをする(3枚目の写真)。
  

処刑の日の早朝、ストルムの父は、牢獄から出され、馬車の柱に括り付けられて広場に向かう(1枚目の写真)。マリーケはストルムの母に会いに行き、十字架のペンダントを渡して信用させ、いつでも発てるよう準備しておくよう伝える(2枚目の写真)。広場に着いた父は、馬車から降ろされ、火刑台の上に縛り付けられる(3枚目の写真)。大勢の人に混じり、フードで顔を隠したストルムとマリーケもいる。
  

ストルムは、父が運ばれてきた馬車の上に立つと、「あれは、僕の父さんだ!」と大声で叫び、フードを外す。「悪いことなどしていない。ルターの手紙を印刷しただけだ。だから、殺されるんだ。あの男によって!」。そして、一段高い場所で見物している審問官を指し示す(1枚目の写真、矢印は審問官)。「どうして、こんな暴虐を許しておくんだ!」。審問官は、すぐに火を点けさせ、「奴を捕まえろ」と命じる。デュコが一瞬映る(2枚目の写真)。ストルムは、「何百人もいるじゃないか! 何かしろよ!」と叫ぶ(3枚目の写真)。
  

ルターの手紙を読んでいた人々は、「そうだ、彼は正しい! やろうぜ!」と叫ぶ。真っ先に実行したのは、デュコ。大きなシャベルで、兵士を叩く(1枚目の写真、矢印はシャベル、叩かれた兵士は赤い鎧を着ている)。男たちが一斉に動き始め、兵士に襲いかかる。その隙に、ストルムは火が点いた火刑台に登り、父を助けようとする。女性たちは、審問官に物を投げつける。男が、「行くぞ!」と叫び(3枚目の写真)、審問官たちのいる台に登る。ストルムは、父を縛っている綱をナイフで切ろうとするが、なかなか切れない(3枚目の写真)。父の服に火が燃え移った頃、ようやく綱が切れ、服に点いた火も何とか消し止められる。
  

ストルムは、父を馬車に乗せ(1枚目の写真)、すぐに広場から出す。マリーケは、素早く荷台に乗り込み、追って来た兵士を蹴飛ばす(2枚目の写真)。無事に逃げるストルム達を見て、デュコが嬉しそうに微笑む(3枚目の写真)。
  

2人は家の前まで馬車を乗りつける。そこには、準備を整えた母と妹達が待っていた。家族同士抱き合うが、いつ追っ手がくるかわからないので、用意してあった荷物をどんどん馬車に積み込む。ストルムは、馬車の上からマリーケに「来て」と腕を差し出すが(1枚目の写真)、マリーケは首を横に振って立ち去ろうとする。ストルムは馬車から降りると、マリーケを振り向かせて顔をじっと見る。馬車からは、父と母が「行くぞ」と催促する声が聞こえる。マリーケは、ストルムの心を感じるとニッコリし、動き出した馬車に2人で走って飛び乗る(2枚目の写真)。そして、馬車は、アントウェルペンの街を無事脱出する(3枚目の写真、矢印は2人)。
  

「ヴィッテンベルク。1年後」と表示される。木骨家屋が並ぶ典型的なドイツの田舎町だ。そこに、1軒の印刷工房が店を開いている。店の名前は、「フーテン&ゾーン〔ドイツ語で息子〕」(1枚目の写真、矢印は店の看板)。馬車で乗りつけた男が中に入って行く。頼んでおいた本を取りにきたのだ。客は、「素晴らしい。あんたは、ヴィッテンベルクで一番の印刷屋だ」と褒める。父は、「優秀な相棒がいますからね」と息子の方を示す。客が、ストルムに「どうもありがとう」と声をかけると、ストルムは、マリーケに、「可愛い助手もいますから」と言い(2枚目の写真)、2人はじゃれ合う。映画の最後は、2人が、工房の前の坂を登ったところでキスを交わすところで終わる(3枚目の写真)。最近の映画にしては、こういう「本格的」なハッピーエンドは珍しい。
  

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